ともしびの花 ~日河 翔の創作手帖~

作品のお知らせや創作活動に関すること、訪ねた寺社の紹介などを綴っています。

大井神社との偶然の出会い

 

先週末、『くれなゐ君』の8回目の校正作業が終わり、今は9回目に入りました。

気になる表現だけではなく、8回目でも脱字を発見したことがショックでした。

自分一人の確認作業になると、回を重ねるごとに"こう表現しているはず”という思い込みが生まれ、客観視する力が減っていきますね。

上巻、下巻とも12万字程度の作品ですが、次回作は上下巻分けずに1冊にまとめたいと思っていますので、今よりは校正作業が早く済みそうで助かります。

 

先日、野宮神社へ参拝したことをブログに書きましたが、その帰り道、偶然小さな神社に出会いました。

嵐山へは割と行きますが観光以外の目的ですので、いつも慌ただしく、ゆっくり散策するという余裕もありません。嵐電嵐山駅の周辺は、ちょっと寄り道したくなる誘惑が多くて、観光客の皆さんを羨ましく思いつつ通り過ぎるのが常でした。

その日も野宮神社から渡月橋に向かって、寄り道するつもりもなく、足早に歩いておりました。しかし、ふと気になる小路があったのです。

この先に何があるのだろう。

普段なら、自分の知らない、良さそうなお店があるかも・・・少し小路へ入ってみようかなとは思っても、またいつか時間ができた時にと思い直して立ち去るのですが。

その日に限って、何があるのか知りたいと思い、吸い寄せられるように足を向けてしまいました。

そこに在ったのが、大井神社です。鳥居のある参道には、今まで気づきもしていませんでした。私が入った路は、参道の方ではありません。

こんな所に神社さんがある・・・と思ったきり、ただ立ち尽くしてしまいました。

どう表現すべきでしょうか、何か言いようのない不思議な気持ちになりました。

もしかしたら、お声がけ頂いたのかなと、ふと思ったり・・・

神社の所在地を調べるためにGoogle mapを確認すると、野宮神社境外摂社と記載されています。正しいかどうかは分かりませんが、境内にあるご由緒には、御社殿も野宮神社の旧社殿を移築していると記載されていますし、現在は摂社様なのかもしれません。

因みに所在地は、京都市右京区嵯峨天竜寺造路町36です。

大井神社様を訪ねることができたのも、野宮神社様のご縁なのだろうと感じ、心を込めて参拝させて頂きました。

 

この時は、次に嵐電嵐山駅付近に来たらまた参拝させて頂こうと思い、ブログに書くこともなく終わっていたのですが・・・

最近、次回作にご縁があるのかもしれないと思い始めました。

 

遅くとも年内には出版する『くれなゐ君』が、平安時代の物語であるため、その繋がりで、次回作も同じ平安時代のファンタジーを完成させようと考えていました。

私が中学生の頃に作った構想を土台とした児童文学なので、気負わずに軽やかに(?)書いていけるだろうと思ったからでもあります。

しかし、時折頭に浮かぶ物語の断片は、どうも違う・・・。

大筋は変わらないとはいえ、当初のものからあらぬ方向へ拡がっているような予感がします。

『くれなゐ君』の時もそうでした。気負わずに楽しく書いていけるシンデレラストーリーのはずが、書き始めてしばらくすると、制御できない状態になりました。

引きずられるように物語を追う、といった方が正確でしょうか。

書き手の能力不足を恥じるばかりです。

次回作も、何だか「軽やかに」書けるような気がしません。ファンタジーではありますが、結構取材が必要になりそうです。

そうなってくると、完成までに随分時間がかかりますので、二作目は資料なしで書けるものに変えて、その執筆中に三作目としての取材を行った方がいいのかもしれないと考え始めておりました。

にもかかわらず、ツイッターのプロフィールに「次回作のため、嵐山近辺をはじめ京都の古社寺を取材中」と衝動的に(?)追記してしまいました。自分でも何故だか分かりません。

これはもう観念して、二作目として準備を進めるべきかと思いました。

 

起筆のきっかけを下さった大井神社様に、感謝申し上げます。

次の小さな物語に書かせて頂く可能性もありますので、作品の中で大井神社様にお会いできることも楽しみになってきた、今日この頃です。

 

著書のご案内

『くれなゐ君』

常陸宮の姫君は幼いながら、都一不器量で無教養と評判だった。

紅君(くれないぎみ)という通り名に惹かれ、元服前の少年・実孝は常陸宮邸で姫君を垣間見る。
まっすぐな姫君と、不器用な貴公子のすれ違う初恋は、都の異変とともに押し寄せた運命の渦に巻き込まれてゆく。

 

「あなたを殺しはしない、決して。この身など惜しくはないのだから」

 

二人を取り巻くのは先帝の長子・一の宮の死、短命だった斎宮、奇怪な流行り病・・・。出家を望みながらも、巫(かんなぎ)の血に目覚めていく紅君は、数奇な運命をたどり始める。

源氏物語の「末摘花」を下敷きに、一人の少女を軸として、美しい情景を交えて織りなされた平安王朝絵巻。